◆「思いを綴るブログ」の意から、「ツヅブロ」と。「本と旅の世界」をメインに、思いを綴ります。
ツヅブロ
◆本と旅の世界-『人を殺すとはどういうことか』美達大和著
2012-01-21-Sat  CATEGORY: エッセイ
服役しながら書く人-告白本-


美達大和のペンネームで、服役しながら書いている人の告白本を読み終えました。
人を殺すとはどういうことか

著者は、服役しながら、30代後半から52歳までの心の変遷を告白しています。

二人の若者を、偏った独自の哲学に従って計画的に殺害し、当初そのことは相手が約束を果たさなかったから当然だと思っていた。

学生時代の成績は一番で、社会に出てからもその才能を見事に発揮し、金銭的には恵まれていたと思われます。

しかし、服役中であることから、この告白本が世に出ることには当然制限があったと推測されますが、告白の内容から、在日韓国人であった父親の影響が絶大だと。

金銭面では成功した父であったが、社会的には倫理面で大きく偏向しています。著しく独善的で、そのことが著者である息子に絶大な影響を与えています。(父が何故そのようであったかも考察する意味もあるかと思われますが)
そんなことから、母親は、著者である彼を置いて早い時期に家を出ています。彼は、あたかも父のロボットのようでした。

ところが、服役して、被害者の家族の思いを知るようになります。わが子を殺された両親や家族に関する本も相当読んだ模様です。
ー第一回目の公判で、彼が刑務官二人に挟まれて退廷する時、被害者の母がいきなり彼をハンドバッグで殴り、「子供を返してっ!」と叫んだーその時すぐに彼の父が、「この野郎っ! 俺の息子に名にしやがるっ! 許さんぞ!」と大声で吼えたー
彼は、こっちが加害者だからこれくらいされるのは仕方ないだろうと考えたー


彼が入っている刑務所は、無期懲役で服役している殺人犯の「寄せ場」です。

一部の服役者を除いて、自らが犯した殺人を本心から悪いと思っていません。また、ヤクザ受刑者も多く、彼らの多くは、順法より組の掟に従うことをよしとします。

しかし、彼のこころは目覚め変わっていったのです。贖罪の気持ちが芽生え、自らの偏った思いに気づいたのです。
時すでに遅しですが、彼は死刑を望みました。が、結果は無期懲役になりました。

務めを着実にこなしながら、同じ受刑者を観察して、彼らがなぜ殺人を犯したのか、そのことをどう思っているのかを対面して訊き、書き残すようになったのです。

そのことで自らの罪がどうなるわけでもないことを彼は承知していますが、犯罪心理というものは、多くの心理学者が述べていることとは違っていることを指摘しています。彼の立場で、何か人の役に立ちたいと思っているのだと思います。恵まれない子供たちに対しても、何かしてあげたい、とふれています。

彼の立場で出来る償いを考えているのです。
今更どんなに悔いても、殺害してしまった人は戻らないが、自らのレゾンデートル(存在理由)を探しているのです。服役中に父の死を聞かされ、生きている間に少しでも良いことをしたいという思いが強くなったのですね。

その実態はどうなのか。それは、読者のみなさんで実感していただきたいと思います。

それにしても、長期LB級服役者のこのような告白本が出されたことは、稀有なことと思います。


以下の新潮文庫です。





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◆本と旅の世界-畑正憲『ムツゴロウの無人島記』
2012-01-05-Thu  CATEGORY: エッセイ
日本の小説家、エッセイスト、ナチュラリスト、動物研究家。

・畑正憲

『ムツゴロウの無人島記』(文春文庫)年末年始と楽しみながら読んで読了。これまでここでふれてきた本とは傾向が違うものですね。鳥について触れたものは取り上げたことがありますが。この著書では、カラスの九郎が出てきますが。

畑正憲さんの動物王国は、いったん東京に越してきたのですが、
集客が思うように行かず、再度北海道(浜中)に戻ったのですね。

現在の浜中のムツゴロウ動物王国は一般公開されていないので、門の中に入ることはできないそうです。

●住所:厚岸郡浜中町後静村

作中、無人島・嶮暮帰島のことが出てきます。

この本では、ムツゴロウ=畑正憲と身内(ヒゲ=弟、ヤセ=女房、チビ丸=娘)と動物たち(馬、秋田犬、アイヌ犬、タヌキ、ヒグマ、カラス、蛇)が登場するが、それぞれ命名されていて比喩や誇張が面白い。

舟のこと、海、海藻、魚、漁などのことを面白おかしく描いていますね。土地の人々との交流もユニークです。

この本に出てくる
★嶮暮帰島(けんぼっきとう)は、北海道厚岸郡浜中町大字琵琶瀬村字嶮暮帰にある隆起海食性台地の島。

一般人は、このような所に家族で移住しようなんて思わないでしょうね。創作の世界ではありますが。
そこが、動物研究家で物書きの畑正憲さん。冒険家の一面があるんですね。


この著書で個人的に面白いな、と思ったのは、

「ムツ呼んでムク」の項。

箱に入れ海に捨てられた雑種犬がムツゴロウに拾われ、「ムク」と名付けられたのだ。
面白いというのは、この項は「ムク」が書いた形をとっていることだ。ムクが人間を批評している。


★ムツゴロウ動物王国のブログ:
http://ameblo.jp/mutsugoroanimalkingdom/

医師の子として生まれた畑正憲さん。生き物が大好き。根っから愛しているんでしょうね。
博愛! これが素敵です。

☆畑正憲
1935年(昭和10年)4月17日 福岡市に生まれる。
昭和29年東京大学入学。 理学部生物学科を経て生物系大学院に進む。
1968年第16回日本エッセイスト・クラブ賞。
1977年第25回菊池寛賞 受賞。
2011年日本動物学会教育賞受賞 

・著書
「畑正憲作品集」
「ムツゴロウの青春記」
「ムツゴロウの動物交際術」
「ムツゴロウとゆかいな動物たち」画集
「ムツゴロウの地球を食べる」
ほか多数。






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◆本と旅の世界-三浦綾子著『千利休とその妻たち』-
2011-12-20-Tue  CATEGORY: 読書
日本の小説家、エッセイスト

・三浦綾子


『千利休とその妻たち』三浦綾子著(新潮文庫)

上下巻読み終え、三浦綾子という作家の呼吸のようなものを感じ取った思いです。

相当取材して書かれたことが想像できますが、女性作家が書いたとは思えませんでした。

やはり、鋭い感性の持ち主で、反面、ストーリー運びは骨太で男性的です。

最初は、これは途中で投げ出すかもしれないと思いつつ、10ページほど読んだところで引き込まれていく自らを意識していました。


宗易(のち、利休)には作中3人の女性が出てきますが、お稲、お幹、そして能楽師・宮王の妻であった「おりき」が、宮王亡き後、宗易の最後の妻となるわけですが、宗易とおりきは、宮王存命中に出会うわけだが、初めて会った時から二人は惹きあうほどに通じるところがあったのですね。

一読者としては、複数の女性に子供を産ませて正妻のところへ戻ってくるというのは不届き者に思われますが、戦国、室町時代のころは、そのことで殊更後ろ指を指されることもなかったのですね。
いわゆる一夫多妻が公然と認められていた。

作中、秀吉には正妻のほかに6人余りの側室がいたことも記されているが、秀吉という男、感情の赴くままに戦をし、女性をわがものとし(利休の娘・おぎんをも側室にしようとし、キリシタンであったおぎんは、憤死?)、自分に逆らう武将や茶人の首をはねた。

茶の湯では右に出るものがなかった利休、あまりに美しくアイデアも備えていたおりき。

三浦綾子さんのこの作品が優れている点は、利休とおりきを軸に描くことにより、戦国時代から安土桃山時代にかけての勢力争い、権力闘争を彷彿とイメージさせている点にある。

それは、久秀、信長、光秀、秀吉、伊達正宗、薩摩の島津一族、石田光成、家康・・らのその時代の動きである。

しかし、作家・三浦綾子が訴えたかったことは、当時の信者のこころの深いところまで到達していたであろう、キリスト教信仰であることは言うまでもないであろう。作中のキリシタンが命を賭して守ったであろうところの。


※千利休(1522年〜1591)は、和泉国・堺の商家(屋号「魚屋(ととや)」)の生まれで、戦国時代から安土桃山時代にかけての商人、茶人。

織田信長が堺を直轄地としたときに茶頭として雇われたが、天正19年(1591年)、利休は突然秀吉の逆鱗に触れ、堺に蟄居を命じられた。最後は切腹にいたるわけだが、作中、魚屋(ととや)殿または様、と宗易(利休)を呼ぶ表現がよく出てくる。


 

◆三浦 綾子
1922年4月25日〜1999年10月12日)
北海道旭川市出身。
1963年 朝日新聞社による75周年記念の1000万円懸賞小説公募に、『氷点』を投稿。
これに入選し、1964年12月より朝日新聞朝刊に『氷点』の連載を開始。

◆著作品
『積木の箱』 朝日新聞社のち新潮文庫
『塩狩峠』 新潮社のち文庫(英語版は"Shiokari Pass"として翻訳/出版されている)
『道ありき 』主婦の友社
『細川ガラシャ夫人』 主婦の友社 のち新潮文庫
ほか多数。


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